インプラント治療に関するお話
植えた毛がなぜいったん抜けてしまうのか、詳しいメカニズムは残念ながら解明されていませんが、毛根組織は周囲から切り離された状態になると、休止期になるようにプログラムされているのではないかと説明されています。
実際は術後3週間まで、移植したヘアのほとんどは少し伸びるように見えますが、いずれほとんど抜けてしまいます。
ヘアライン付近の1本毛がそのまま伸び続けることも例外的にありますが、それも正常な経過です。
そして2〜3か月後に新しい毛が生えはじめます。
生えはじめの毛は新芽のように先が細くて弱々しいので、注意して見ないと見落としてしまうほどです。
そして術後6か月後には定着したヘアのほとんどが発毛します。
生えはじめのヘアは軽くウェーブのかかった産毛状のものですが、これらは通常1年程度でドナー本来の太さになっていきます。
ときどきウェーブが気になるという質問を受けますが、長くて1〜2年で直毛になります。
まれに生えたヘアの1〜2%の割合でカールが残ることもありますが、その原因ははっきりしていません。
移植した毛が完全に太く長く生えそろうまでには、12か月ほどかかると思ってください。
つまり、植毛の最終的な仕上がりはこの時期をもって判断すべきということです。
術後、既存のヘアの脱毛が起こるケースもあります。
これはショックロスとか、単にショツクと呼ばれる現象です。
正確には「植毛の影響と思われる既存のヘアの一時的または永久的脱毛」と定義され、術後1〜2か月後に見られます。
スリットを数多く設けるために、毛切れなど機械的もしくは血行などの変化が原因で、一時的にヘア環境が変化し、既存のヘアが休止期に入ることで起こることが原因と考えられます。
そのため、休止期脱毛といういい方をすることもあります。
通常、ショックロスで抜けるのは一時的脱毛(3〜4か月)がほとんどですが、細くなってきた弱いヘア(最終段階のヘア)が抜けた場合、再び生えるとはいえません。
その場合は永久的な脱毛ということになります。
また2回目の植毛を行ったあとに、1回目に植えた移植毛の脱毛はほとんどありません。
太くて健康なヘアのロスはほとんどないか、あったとしても少なく、逆に細くて弱いヘアのロスは多くなっています。
ヘアラインはショックロスを気にせず、なるべく高密度に植えたほうがよいと考えます。
ツムジは、そこが仮に植毛で濃くできたとしても、さらに薄毛が広がることもあり得る、つまり先が読みにくいということです。
また、薬の効果がより期待できるなどの場所もあり、あまり攻撃的な植毛をしないほうがよいと考えます。
もちろんこれは受ける方の希望にもよりますし、反対意見もあるでしょう。
術前後のプロペシア、ミノキシジルの服用はショックロスの予防や改善に有効だとする意見が多いので、場合によってはその使用をおすすめします。
技術的には、ショックロスが多いクリニックとまれなクリニックがあるようです。
たとえば単一植毛を行っているクリニックでショックロスが話題になることはまずありません。
このことは、小さなスリットで植えれば問題にならず、逆に高密度の大きなスリットではより頻度が上がることを示しているようです。
高密度に植えることは当然のニーズです。
とすると、なるべく小さなスリットでということになるでしょう。
同じ本数ならより多くの株を、つまりより小さなサイズのスリットで多くの株を植えるほうがショックロスには有利だと思います。
その場合、拡大鏡を使って、既存のヘアの生えている向きや角度をよく見極めて、その間に正確にスリットを入れることはいうまでもありません。
あとは、起こしやすいケースをなるべく術前に予想するということでしょう。
ただし、実際にあらゆるケースで予想するのは困難であり、不可能なことではあるとは思います。
具体的にショックロスを防ぐためには、以下のような方針が考えられます。
同じ範囲に複数回、植毛を行うときには、なるべく期間をあけること(できたら8か月以上)、あまり密度が下がっていない部分には、なるべく植毛を行わないようにするか、少し控えめに行うこと。
女性に起こる特定タイプの薄毛にはとくに慎重に行うことそれでもショックロスが起こってしまう場合、休止期脱毛については3〜4か月で回復すると考えるようにし、それでも回復しないヘアは比較的近い将来、いずれは抜ける運命にあったのだと割り切るしかないと思います。
薬物の使用も改善に役立つかもしれません。
まったくヘアのない部分に植毛するのであれば、このような悩みはないのですが、既存のヘアがある限り、ショックロスのリスクは否定できません。
ただし、すべての人がショックロスを経験するわけではありません。
あるデータでは、ショックロスが起こる確率は20%といわれています。
逆にいえば8割の方には気になるショックロスはなかったということです。
植毛では、レベルを最終的に最低レベル、まで持っていくことを目標としています。
目の植毛でレベルからレベル、になり、目でレベル、になるという考えです。
つまり植毛のゴールとは、薄くなっていない後頭部(採毛部)の密度の半分を達成するということといっていいでしょう。
では次の手術を受ける場合は、どのぐらいの期間を置いて行えばいいのでしょうか。
2回目の手術は、初回とは別の場所に植毛する場合と、密度を上げるために1回目と同じ場所に植毛する場合に分かれます。
この場合は、ドナーの傷やテンションが十分に回復するのを待って、最短で3か月後くらいに2度目の手術を行うことが可能です。
ドナーの突っ張り感が改善しない状態で同じ傷からドナーを採ると、テンションによって傷が広がったり、ドナーの休止期脱毛を起こす場合があるからです。
一方、同じ場所に植毛するとなると、ドナーの回復具合だけでなく、1回目に植毛した部分の発毛状態も考慮する必要が出てきます。
発毛は普通6か月で完了するので、それ以降はいつでも2回目の手術は可能ですが、やはり結果が出る8か月くらいはじっくり様子を見たほうがいいと思います。
「もっと早い段階で手術をして密度を上げたい」と望む方もいらっしゃいますが、あまり短い間隔で同じ範囲に植毛すると、最初に植えてまだ発毛していない毛母細胞に、ダメージを与える可能性が高く、その分余分なドナーが必要になるリスクがあります。
スリットによる密度を上げるために2回目の手術をする場合、まずワンスカーテクニックを用いて、前回の傷と同じ場所から幅10cm程度、長さは前回と同じぐらいを切除してドナーを採取します。
次に植え込みのためのスリットを、今度は前回に植えた毛根と毛根の聞に入れていきます。
そのため、手術後のカサブタもヘアの聞に隠れて初回ほど目立ちません。
手術後、後頭部の突っ張り感は残りますが、これも前回とほぼ同様か、やや強めだと考えてください。
この突っ張り感もやはり2週間ほどで気にならなくなるはずです。
私も実際に植毛手術を体験した私は6年前に自ら植毛手術を体験しました。
それまでの私のヘアの状態は、生え際が後退し、両サイドにM字型のそり込みが入っていました。
1回目の植毛で2000本程度、2回目の植毛でもほぼ同じ本数を植毛しました。
その経過は順調そのもので、術後4か月目に薄いながらもヘアラインがしっかり形成されはじめ、6カ月を過ぎた頃から急激に濃くなっていく様子がおわかりいただけるでしょう。
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